お絵描きする子ども

感染症であれ、アレルギーであれ、他のどんな病気でも予防や克服のカギとなるのが免疫力です。

免疫力とは、簡単に言えば「病気の元になるものを追い出す力」のことです。

例えば、1996年に大阪堺市で起きた学校給食によるO-157感染では、患者総数9,523名のうち791名が入院しました。さらに121名は溶血性尿毒症症候群を発症し、学童3名が死亡しました。

この同じ菌に感染していながら、重症化する子どもとそうならない子どもとの違いをもたらしたのは何でしょうか?

それが、病原性大腸菌O-157を体内から追い出す力、つまり免疫力です。

もちろん親としては、子どもの免疫力が強いことを願います。

では、子どもによって免疫力の強い子と弱い子がいるのは、なぜなのでしょうか?

生まれつき?

もし免疫力の違いが生まれつきのものなら、あきらめるしかないので子どもも可哀そうです。

しかし、最近の研究により、免疫力は生まれた後に備わる部分が大きいということが分かってきました。

自然免疫と獲得免疫

免疫力の元となるのは、人体に存在する免疫細胞と呼ばれるものです。

免疫細胞は体の幾つかの部位に分かれて存在していますが、60~70%は腸に集中しています。

ですから、免疫力について考えるなら第一に腸をおさえておかなくてはなりません。

腸のもつ免疫力は腸管免疫と呼ばれていますが、腸管免疫は2つのシステムからなっています。

それが、自然免疫と獲得免疫です。

自然免疫は、生まれつき持っている免疫システムのことで、獲得免疫とは後から獲得した免疫システムのことです。

強調したいのは、免疫力は遺伝だけで決まるものではなく、大半は生まれた後に獲得していくものだということです。

ところで、それらの獲得免疫は自然に発達していくものなのでしょうか?

遠い昔の時代には、自然に任せていても免疫力が鍛えられていったのかもしれません。

しかし、現代において強い免疫力をつくるには、意識的に鍛えてあげなくてはなりません。

免疫システムの挫折

現代社会は、大きく2つの理由で強い免疫力の獲得が難しくなっています。

その理由とは、
1.実戦経験を積みにくい
2.腸内細菌が減少しやすい という点です。

試合したことのないスポーツ選手

もし試合経験が一度もなく、ひたすら本で研究していたり、一人で延々練習をしているだけのスポーツ選手がいたら、本番で勝てるでしょうか?

難しいですよね。

免疫システムも同じで、実戦経験を通して敵を正しく見分け、的確に攻撃することを覚えていきます。

ところが、現代社会では免疫システムが実戦経験を積む機会がますます少なくなっています。

一つには、清潔がいき過ぎているという点があります。

家でも外でも、何でも除菌・殺菌することが良いことと思われています。

しかし、これは見方を変えれば、子どもから試合相手を奪っているということになります。

もちろん強力な病原菌のいそうなところは避けなくてはなりません。例えば、不衛生な川とか、衛生管理のされていない食品などです。

そのような強い敵には、子どもの免疫力のレベルではとても勝てません。

でも、土を触らせないとか、部屋中に除菌スプレーを撒くとか、常に手を洗わせるなどは必要ないどころか、将来の子どもの健康にマイナスです。

それでは免疫力の経験値がいつまでも上がりません。スライム級の弱い雑菌には、どんどん出会わせたほうが良いのです。

上げられるときに経験値を上げておかないと、レベル3ぐらいでドラゴンに出会う可能性だってあるのです。(O-157事件のように)

同じ考えでいくと、子どもが病気にかかった時にすぐに薬を飲ませるという行為も、実戦経験を奪うことになります。

熱が出ても、すぐに解熱剤を与えるのではなく「少し我慢」させることで、子どもの免疫力は戦って学び、強くなります。

もしお友達から風邪をうつされたら、経験値をためるチャンスをもらったということで感謝しましょう。

人手不足の工場

元気いっぱい女の子

免疫システムをひとつの工場に例えると、その工場の従業員が腸内細菌です。

いくら素晴らしい機械類が揃っていても、人手不足の工場では大したものは作れません。

同じように、腸内細菌が少ないなら、免疫システムもしっかりと機能しません。

ところが、現代では腸内細菌を減少させる様々なワナが存在します。

例えば、抗生物質、野菜や果物の残留農薬、食品に添加された防腐剤・保存料、水道水の塩素、その他有害化学物質によって体内に発生する活性酸素などです。

このようなワナに囲まれて生活していますから、子どもの腸内細菌はどんどん減っていき、免疫システムを動かせる人材ならぬ「腸材」が慢性的に不足しているわけです。

そのまま放っておくと、いずれ工場閉鎖に追い込まれます。

ですから、今の子どもたちには善玉菌を十分すぎるぐらいに補充してあげたほうがいいのです。

一生クリーンルームで暮らせたら

子どもの免疫システムがうまく機能しなくても、安心して暮らす方法があります。

それは一生を無菌室で暮らすことです。

実際に無菌マウスは、そうでないマウスよりも1.5倍長生きしたという研究報告があります。その研究については以下の記事の終わりのほうに出てきます。

完全に菌をシャットアウトした一室から一歩も出ずに、
教育も仕事も他人とのコミュニケーションもネットで行ない、
必要な食糧や水の調達もドローンが宅配してくれる・・・

そんな社会がいずれ来るのかもしれませんが、今のところは無理です。(正直なところそんな生活は嫌です。)

ということは、どんな子も腸子不足の経験値の少ない免疫のままで育ててはいけないということです。

現代社会に生活している限り、どんなに除菌しても完全無菌で暮らすことはできません。

それに病気には感染症だけでなく、ガンや糖尿病など生活習慣病がありますが、この種の病気にも免疫力がなくては戦えません。

つまり、今の時代に子どもを病気にしたくないなら、免疫力の強い子に育てるしかないのです。